定期接種になったのが最近のため、中学生以上のお子さんに接種漏れが目立つのがB型肝炎ワクチンと水痘ワクチンです。まだ、間に合います。確実に受けましょう。ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは2013年から定期接種でしたが、すぐに積極的な勧奨を中止したので接種率は1%以下になりました。ようやく2022年4月から積極的勧奨に戻りました。以前、メディアで報道された副作用の内容には誤りもありました。専門機関のHP(日本小児科学会、厚生労働省)から、最新で正確な情報を基に判断しましょう。
B型肝炎ワクチン
以前は任意接種でしたが、2016年秋から定期接種(1歳まで)になりました。そのため、小学高学年以上では接種していない方がまだ、多くおられます。B型肝炎ワクチンの免疫は大人よりも小児期の方がよくつきます。世界の多くの国は生まれた直後(生後24時間以内)に1回目を開始します。蓮井は6回接種(20歳代と2年前に3回ずつ)しましたが、抗体(免疫)はついていません。
B型肝炎ウイルスは血液だけでなく、汗、涙、唾液、尿などからも感染します。稀ですが、保育所や大学運動部で流行した事例もありました。以前は輸血からの感染がありましたが、今はほとんどありません。日本では現在、年間に140~260人の急性B型肝炎患者が発症します。慢性化すると肝臓がんのリスクが高くなります。性的接触による感染が約7割を占め、20~30代前半に多くみられます。「中学、高校生の皆さん。未接種の人はすぐにワクチンを受けようネ!」
ところで、法律事務所のCMに「B型肝炎訴訟」と言う言葉を見かけますが、B型肝炎ワクチンとは全く関係ありません。これは、昭和23年~63年までの間の集団予防接種の時、注射器を連続使用されB型肝炎を発症した方が国に損害賠償を求めている事案です。30年以上前から注射針は使い捨て(ディスポ)で共用することはありません。混同しないよう注意してください。
水痘ワクチン
2014年秋から定期接種(1~3歳未満の間に2回)になりました。小学生の高学年以上で接種漏れの方が相当おられます。「えっ、2回もいるのですか?」と言われるお母さんが多いですが、1回だけでは不十分です。成人になって感染すると重症になり、入院率、死亡率が急増します。大人になっても免疫を維持するため2回接種です。
健康で元気なお子さんは合併症もなく、治癒することもありますが、患者さんの状態によって重症化や合併症の頻度が大きく変わります。新生児、免疫が低下している方(ステロイドや免疫抑制剤を内服中、抗がん剤治療中、移植後)、妊婦、思春期以降の方は合併症のリスクが非常に高くなります。命にかかわることもあります。入院中の患者さんが水痘を発症すると病棟が一時閉鎖したり、本人だけでなく他の人の手術も延期になることもあります。自分は軽症で治っても他人や病院に大きな迷惑をかけます。「2回接種ですよ。」
ヒトパビローマウイルスワクチン:HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)
2022年4月から積極的勧奨(接種することを強く勧める)に戻りました。子宮頸がんは毎年約2,800人が亡くなっています。この人数は1年間の交通事故死亡者数を上回っています。20代から発症し、30~40代までの若い女性に多いのでマザーキラーともいわれます。2023年4月から9つの型のHPV感染を予防する9価ワクチンも定期接種に承認されました。このワクチンは約90%の子宮頸がんを予防し、効果も20年程度続くと言われています。「子宮頸がんの検診を受けるので予防接種は受けたくない!」→それは大きな間違いですよッ!特に16型、18型の子宮頸がんは進行が早く、検診で見つかっても大きな手術になります。子宮を摘出するため妊娠・出産ができなくなるだけでなく様々な後遺症(排尿障害、足のむくみ)が現れます。
副反応について:HPVワクチン接種後に生じる多様な症状(頭痛、倦怠感、関節痛、目めまい、月経不整、失神、けいれん等)について多くの解析が行われました。ワクチン接種との因果関係はありませんでした。多様な症状は一般の非接種者(ワクチンを受けていない人)にも発症し、その発症率にも差がないことが証明されました。ワクチン接種後だけに起こるものではなく、厚生労働省のリーフレットには「機能性身体症状」という名称が使用されています。現在、接種後に何らかの症状が現れた方のための診療相談窓口が全国で100の医療機関(大阪府には4か所)に設置され、全ての都道府県に整備されています。また、各都道府県において衛生部局及び教育部に1箇所ずつ「ヒトパビローマウイルス感染症の予防接種後に生じた方に対する相談窓口」を設置しています。
小学校6年生から高校1年生の女子が対象で、2~3回接種します。「是非、接種してください。」はすい小児科のスタッフの対象年齢のお子さんは全員接種しました。